気泡クラスタと乱流制御
無数の気泡が液体中を浮上する時に,時に気泡は集団(クラスタ)を形成します.単一気泡の運動は解析的に理解が深まっていますが,クラスタ化する原因や流れに及ぼす影響は,あまり良く理解されていません.気泡のクラスタの発現機構や,気泡クラスタを用いた流動制御を研究しています.
- 世界初!クラスタ化の原因解明!
- 乱流の沈静化に成功
- 抵抗低減や流動制御に応用可能
https://doi.org/10.1146/annurev-fluid-122109-160756
https://doi.org/10.1017/jfm.2021.414
界面の汚れと気泡の力学
液体の中で気泡は浮上します.これはアルキメデスの原理により説明できますが,その速度や変形は様々に変化します.気泡が球形であれば,その浮上速度は理論的に見積もることが出来ると言われていました.しかし,洗剤などの界面活性剤が水に微量でも入ると,その速度は劇的に変化します.我々は界面活性剤の影響など,気泡の運動の理解を深めています.
- 世界初!界面活性剤の影響定量化!
- シミュレーションで運動の再現に成功
- 個別運動から集団性の発現の鍵

ギネスビールが描く模様の力学
ギネスビールをコップに注ぐと,泡が自発的に模様をつくります.この美しい模様はビール愛好家以外にも,科学者達の心を惹きつけ,模様が発生する仕組みは半世紀以上も未解明となっていました.我々が「模擬ギネスビール」を作り,再現性の高い実験を行った結果,模様とは,重力流の不安定により生じる転波であることを示しました.
- 世界初!模様の不思議を解明!
- 坂道で雨水が作る模様と同じ(転波)
- 透明模擬ギネスビールのレーザー計測
https://gfm.aps.org/meetings/dfd-2019/5d790905199e4c429a9b2c83
https://doi.org/10.1103/PhysRevE.103.063103
フードプロセッサの振動予測
フードプロセッサを使っていると,中身が暴れて危険だと感じたことはありませんか?このとき,フードプロセッサの中では,液体がせり上がり,その後落下する現象が繰り返されています.再現性の高い実験系で精緻な速度計測を行った結果,気液の分布が周期的に変化する振動の力学を説明し,危険発生を予測することに成功しました.
- 世界初!危険な運転状態を予測!
- 高速旋回流の速度場計測
- フルード数(遠心力と重力のバランス)
回転攪拌における流動の遷移
コーヒーにミルクを入れてスプーン混ぜていると,スプーンの背後に渦が発生します.回転攪拌は,様々な工業機器の内部で利活用されているため,流動抵抗の予測は機器の設計に必要不可欠です.DX機械設計を行うために,高い精度で流動抵抗を評価することに成功し,流動の非線形性による生じる遷移を統一的に説明することに成功しました.
- 世界初!攪拌抵抗の数値予測!
- 壁と旋回流による遷移遅延
- 隙間レイノルズ数で整理
マイクロプラスチックの捕集
マイクロプラスチックなど,大きさが小さく,かつ,密度が水に近い物体は,フィルタでの濾過が困難です.効率的な濾過の方策を創出するためには,電気化学的な表面力に加え,力学的な運動を正しく理解し,予測する必要があります.微小粒子の運動と捕集効果の力学を説明することに成功しました.
- 世界初!微小粒子の捕集を力学的説明!
- 角部での捕集効果 大
- よどみ領域での捕集効果 大
回転体に駆動される気液の運動
バームクーヘンを作っていると,生地の厚さ調整が難しいと感じたことはありませんか?生地の硬さ(粘度)や巻き取り速度,容器の形状によって,バームクーヘンの品質が大きく変わります.数値計算を用いることで,(非現実的なもの含め)様々な条件で現象を観察し,法則性を見出しましました.エンジン内の油膜厚さの予測にも活用できます.
- 世界初!流動状態を予測!
- ガリレイ数(粘性と重力のバランス)
- フルード数(遠心力と重力のバランス)
https://doi.org/10.3811/jjmf.2020.022
https://doi.org/10.3811/jjmf.2021.016
分子タグによる非侵襲速度計測
光化学反応により退光させた蛍光分子をタグとして,粒子懸濁液の液体速度を計測しました.一般的に,液体の速度を計測するためには,トレーサ粒子の運動を解析し,速度を取得します.しかし,粒子懸濁液にトレーサ粒子をいれても,これらを正確に区別できません.分子タグを用いることで,液体の厳密な速度計測を実現しました.
- 世界初!高濃度粒子懸濁液の速度を計測!
- 光化学反応分子タグ
- 混相流の速度場計測
血流の超高速高精度数値解析
血液は生体内では酸素や栄養の輸送などの体内循環を担います.血管疾病の作用機序解明やマイクロ流体デバイスなどの医工学的応用のためには,赤血球や血小板など血球細胞を考慮しつつ,流体力学的に血流の理解を得ることが重要です.図の例では,血管壁と血小板の間の分子間相互作用を連続体力学の枠組みで取り扱うためにモデリングを行い,高速な数値計算手法を新たに提案しました.スーパーコンピュータを利用して超大規模シミュレーションを実行し,血小板の血管壁付着(=血栓形成の初期過程)を再現することに成功しました.
- 世界初!超高速高精度血流解析!
- 赤血球の動きが血小板の動き決定
- 疾病の予測や進行を推定可能に
https://doi.org/10.1016/j.jcp.2010.09.032
https://doi.org/10.1016/j.jcp.2018.08.002
ウイルス飛沫の流体力学的拡散
※.集団の中で感染者が咳をした場合を想定し,飛沫やエアロゾルの過渡的な運動をシミュレーションしました.咳が作り出す渦輪と人間の集団行動との相互干渉により,感染リスクが大きく変化することが分かりました.また,基本的感染症対策である「ソーシャルディスタンス」や「咳エチケット」の重要性も改めて確認できました.
インフルエンザウイルスやコロナウイルスなどの感染症は,咳により放出される飛沫やエアロゾルに感受性者が曝露されることで感染します- 世界初!集団行動と飛沫の移動を動的解析!
- 基本的にソーシャルディスタンスは重要
- 基本的に咳エチケットは重要